50の風景と、風景にまつわる言葉。

小さな世界の窓から見える色々な風景のひとつずつ。

ピープル・ピープ、探訪記。

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ピープル・ピープという試金石

 

札幌出身の人に出会うと、必ず「ピープル・ピープ」を知っているか聞くことにしている。

その人を推し量るわけではないけれど、「ピープル・ピープ」を知っているかどうかは、ある種の試金石なような気もする。初めて行ったのはもう10年前の夏で、鈍行列車で東京発、新潟経由での北海道旅行。その前の年にベトナム旅行をしていた時に出会って仲良くなった日本人の友達に会いに行って、「美味しいパフェのお店がある」と連れて行ってもらった。しかも、何故か二晩連続で通った。

 

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その「ピープル・ピープ」は、札幌のすすきのの端、大通り沿いにぽつねんと存在している。看板には「パイとケーキ」、そしてその片隅には小さく「PIE SHOP」と書いてある。ちなみに、パイは売っていない。もはや、その時点で期待せざるのは得ないのだけれど、入ってからが唯一無二の独特の展開で、打ちのめされる人は徹底的に打ちのめされるはず。ちなみに、デートにはお勧めできない。いや、それこそ相手を推し量るためであれば最適ではあるのだけれど。

兎にも角にも「ピープル・ピープ」はパフェが有名なお店で、一風変わったマスターが一人でやっていて、結果、注文してからパフェが来るまで平気で40-50分程かかる。こんなことでよく流行るなとは思うかもしれないけれど、そのパフェは本当に美味しくて、ハマる人は本当にハマると思う。

ここのパフェは作り方もとてもこだわっているようで、見た目とは裏腹にとても上品な味。しつこさもなく、量はそれなりに多いものの、あっさり食べられてしまう。そして、季節によって、限定メニューもあり、10年前に行った時には、その翌日から「ブルーベリーパフェ」が始まるということで、2晩連続で通って食べたんだった。

店内の独特の匂い。3人で二つ注文して、一つ目がまず40分後にやってきて、その30分後に二つ目がやって来るという独特過ぎる展開にすっかりメロメロになってしまった。

 

その後も何度か札幌に来ることはあったのだけれど、なかなか都合が合わず、今回ようやく10年振りに訪れることができた。早めの晩御飯にジンギスカンを食べて、テンション上げて、心からワクワクしての探訪。そして、その期待を完全に上回る内容。もう何から何まで最高。

「ピープル・ピープ」で検索すると、色々と出てくるのだけれど、このお店を説明するには、タイムラインで事実だけを述べるのが一番良いと思う。以下はその探訪記。

 

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日付:2016年1月23日(土)

天気:雪

 

19:10 入店

雪が降る中、お店に到着。寒い。入り口のドアには「19時15分頃に開店」とある。入ってよいものかと少し悩むも「寒いので中でお待ち下さい」と書いてあるのを発見。意を決して中に入る。

薄暗い店内。見渡すと、すでにお客さんが何組か座っている。とりあえずそこで待っていると、数分後にマスターがやってくる。すかさず「初めて?」と聞かれる。「ずっと昔に来ました」と答えると、「とりあえずどこか座って」と言われる。半地下席もまだ空いてあるらしいので、半地下に陣取ることにする。階段を降りて正面のテーブル。店内が見渡せる良席。そう言えば、10年前もここに座ったなと記憶が蘇る。

荷物を降ろして少し落ち着いたところで店内チェック。先客は5グループ。その後も続々とお客さん来店。その都度「初めて?」「すごい時間かかるよ」「待てる?」「キャンセル受け付けないよ」「止めた方が良いんじゃない?」とマスターからのお言葉。特に一見さんには厳しい。むしろ、こんなに一見さんが多いことに驚愕。まあ、お店のことをつぶやいたりしたくなるという意味ではSNSと相性が良いし、こうして人気が出るの仕方がない。

半地下は10年前の記憶とほぼ同じ。少し違うのは、10年前はこの半地下席はもっとジメジメして、何とも言えない匂いがしていたこと。また、昔とは違って、店内にはいたるところに「撮影禁止」の文字。時代の流れを感じる。

それぞれのテーブルには注意書きの紙が置いてある。「トラブル防止の為、時間を気にするお客様(例えば、どのくらい時間がかかりますか、待ちますかと聞かれるお客様)は、その時点でオーダーを受け付けません」といった文言。あと、お店は基本2回転が限度ということも書いてある。

 

19:27 注文

満席になったところで、ようやくマスターが各テーブルに回って注文を取り始める。注文のやりとりも特徴的。「チョコレートすごいビターだけど大丈夫?あとでイメージと違うと言われても困るよ」「クリームチーズは、チーズケーキじゃなくてクリームチーズね?」など。それぞれが恐る恐る注文完了。その後、それぞれのテーブルにパフェ用のスプーンが配られる。注文が終わるとメニュー表は没取。

 

19:35 ケーキ到着

パフェはまだ時間がかかるとして、後ろの席で注文していた、チョコレートケーキと飲み物が到着。どうやらケーキはすぐにくるらしい。ケーキに注がれる全員からの視線。そりゃ、見るよ。なお、ケーキを頼んでいたのはこのテーブルのみ。比較的大きなケーキの到着に「今日はパフェ来るの時間がかかってもよいな」と頼んだ女の子がつぶやいていたのは聞き逃さなかった。

 

19:41 ミュージックスタート

急に音楽が鳴り始める。ピアノを中止としたジャズ。エヴァンス?10年前は音楽なんてかかっていなかった。おかげで、店内のマスターの声が聞こえない。そこだけが残念。

 

19:46 満席

完全に席が埋まる。どうやらウェイティングも入ってる様子。入り口付近に立っている人も見られる。ここから一回転待つと注文が来るのはいつになることやら。店内はかなり狭いので、入り口付近に座っているお客さんは食べにくいだろうな。やはり、ベスト席は半地下のテーブルだなと改めて思う。

 

19:49 歓談

店内の緊張感もほぐれ、音楽の効果もあってか、店内のお客さんもそれぞれ雑談し始める。なんだか、普通のおしゃれな喫茶店の雰囲気になってきた。あの殺伐感は今や見受けられない。キッチンの方ではミキサーの音が聴こえる。最後の仕上げ?(あとから分かったことだけれど、クリームを泡立てている音だと思われる)

 

20:00 漫然

特に動き無し。暖房のせいでだいぶ暑くなってきた。半地下のスペースには、壁に備え付けのオイルヒーターと、灯油ストーブが設置されている。上着等を掛けるスペースもないので、ほとんどの人が上着を羽織ったまま、ジッと待っている。ある意味では修行。そう、ピープルピープはある意味では思想。なお、10年前は最初にコップの水がもらえた記憶があるのだけれど、どうやらない模様。(と思ったら、お水はセルフサービス、という注意書きを後ほど発見)

 

20:05 完成

厨房に動きあり。どうやら一番目のパフェが完成した様子。上の階のテーブル一つにパフェが運ばれていた。おそらく最初に入店したお客さんの模様。

 

20:14 空白

すぐにパフェがどんどん出てくるかと思ったが、最初の1テーブル目で打ち止めなのか、動きが無い。店内に若干の疲労の雰囲気が漂ってくる。奥に座っている、ほとんど言葉を交わしてないカップルのことだけが心配。

 

20:16 到着

ついに、いちごパフェ到着!一度に大勢分を作ってることもあり、まずは、いちごパフェだけが5,6個一気に運ばれてくる。あと、追加でチョコとバナナは同時に作ったらしく、それも運ばれてくる。それ以外はまた次のターンの模様。配膳はかなり適当で注文の順番はほぼ関係なく、「いちごの人どこ?」と大まかに渡される。自分は階段降りて正面の良席だったこともあり、始めにパフェをゲット。

ついに対面したパフェは記憶の通り。そして「パフェ」とは言いつつも、ほぼアイスとも言える食べ物。そこに、少しばかりクリームが乗っかってる。ただ、このアイスが実に美味しい。そして、グラスも冷凍されていることもあって、全然溶けなくて、最後まで美味しい。ほんとに不思議な食べ物。なお、「パフェ」というのは店内のノートによると、「アイスを料理したもの」であって、お店によって色々な形があるとのこと。勉強にもなる。

 

20:26 完食

ひたすらに食べ続ける。美味しい。乗っていたいちごは少し酸っぱかったけれど。本当に最後まで同じ美味しさ。今度はクリームチーズパフェを食べたい。ちなみに「撮影禁止」の貼り紙に恐縮して写真は撮れなかったのだけれど、どうやら店内の撮影が禁止らしくパフェの写真も含め卓上の撮影自体はOKの様子。ということで、完食の写真。

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20:31 片付け

食べ終わったし、どうしたものかと雑談していると、残りの注文が他のテーブルに運ばれてきて、そのついでに食器が下げられる。ちょうどよいタイミングだなということで、撤収することにする。

 

20:35 会計

いちごパフェ2つで、代金は1760円。千円札を二枚出すと、「10円玉ある?一枚で良いんだけど」と言われ、10円玉をすかさず出す。お釣りと共に、これまた独特のチケットを渡される。チケットは2種類あって、その1つはこれがまた不思議な「クリーンカード」。タバコを吸うともらえないらしいけれど、このお店でタバコを吸える人は流石にいないと思う。このチケットも10年前ももらった記憶がある。もちろん、どこかに行ったけれど。今度は大切に持っていよう。もう一つのドリンクチケット?には店名の意味まで書いてあります。もはや、思想。

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20:38 撤収

狭い会計スペースで支払いも終わり撤収。出る頃には店内には5,6人、そして外にも2,3人とすごい行列。この寒い中で待つなんて凄い。ここは開店と同時入店が推奨。

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というわけで、注文から到着までは約50分。その間も、観察するだけでワクワクして、一瞬たりとも飽きることもなく、最後まで楽しく過ごしました。そして、パフェ(というか、ほぼアイス)の美味しいこと!

マスターは10年前と比べて、心無し若返ったような?今度はパフェだけでなく、ケーキも食べてみたいな。ホールケーキも注文できるらしく、おそらくケーキも相当美味しいとみた。

 

改めて書きますが、あくまでお勧めはしません。この探訪記を読んで「気になる」と思った人で、時間に余裕がある人はぜひご訪問あれ。

 

 

拝。