時代の流れと関係なく、今更ながら、でんぱ組 Inc. を集中して聴いてます。
正確には、アルバム「WORLD WIDE DEMPA」は、だいぶ前からiPhoneのライブラリには入っていたのだけれど、少し聴いてみて、なんというか「とっつきにくい」というのが、第一の感想で、なんとなくあまり聴かないでいました。
でも、ここにきて、昨年末にMVA ETAの日本代表に選ばれたというニュースもあり、
改めて本腰を入れて聴いてみると、これが、とても良い。他のアイドルとは明確に立ち位置が違くて、これはなかなか興味深いなと思い、
でんぱ組Inc.について、真剣に考えてみた。
とっかかりとして、まずは、「アイドル」を整理してみる。従来のアイドルは、テレビをメインの場として、基本的にはテレビ越しにたくさんの「ファン」をかかえていました。
このテレビという一線を超えてきたのが、近年のアイドルなわけで、その象徴とも言えるのが秋葉原という場所。その秋葉原を聖地とするアイドル文化としては、AKB48、ハロプロ、ももクロ、あたりが代表的かと思います。
まずは、このあたりのグループがどうやって、ファンを、そして「オタク」を獲得しようとしているか。それは、簡単に言うと「どうやってファンとの距離を近づけるか」に尽きるわけで。
シンプルな方法としては、コンサートを開くこと。その発展として、握手会があり、あるいは専用劇場のオープンなどが挙げられます。各グループはある意味では競い合うように、それぞれのファン(オタク)との距離を近づけようとしました。それはステージに出ることで、テレビという一線を超えた、とも言える。
そうやって、しのぎを削りあったアイドルグループですが、ここで出た大技が、いわずと知れたAKB48の選抜総選挙。それまでアイドルが必死にオタクに近づこうとしていたところ、そのオタクを有権者にすることで、自分のステージに上げてしまった。
今の状況は、AKB48の一人勝ち状態ですね。
まあ、それはどうでもよいとして、いずれにせよ、このあたりのグループはリアルな等身大としてのアイドルとして、ファンに向き合っているという意味では共通です。
そこで、一つ、対照的な存在が、Perume。(でんぱ組 Inc.の話はもうちょっと先で。。)
Perfumeが少し違うのはターゲットが完全にオタク層でないこと。そして、戦略的にリアルな存在というよりもヴァーチャルな存在として打ち出してます。アルバムジャケットや、PVや、ライブの演出を見ても、CGや最新の技術を駆使してますね。もちろん、コンサートなどは開くので、アイドルとしての存在はありつつも、よりPOPミュージック、芸能人としても存在に近いと言えます。等身大の姿をさらけ出さないことで、逆に、他のグループときれいに差別化が図れています。
そのメリットは、、
こんなところ
あと、とても大事なことは、PerfumeのPV(そして振り付け)はかなり意図的に、「狭い空間の中で成立する」ものになっているということ。AKB48のようにステージ上を走り回るわけでもなく、あるいはももクロのように飛び跳ねるわけでもない。
PVの画面越しに見えるこの狭い空間は、すなわち、視聴者のお茶の間だったり、個人の部屋であるわけで、その結果、Perfumeに関しては「踊ってみた動画」がたくさんupされてます。要は、モノマネして、自分もPerfumeになり切りたい、と思わせてもくれる。
また、ハロプロ、AKB、ももクロあたりのグループのファンは圧倒的に男性が多いですが、Perfumeは女性のファンも多く、年齢層も幅広い。ここも、Perfumeが他のアイドルグループとは大きく違う点(コンサートに行った時は、若干女性の方が多かったような)。
Perfumeの分析だけでも十分に面白いのだけれど、さて、ようやくでんぱ組Inc.の話に入ります。
前述の秋葉原系アイドルグループの特徴は、オタク層に向けてのベクトルを出して、それで競争していること。つまり、彼女たちは、オタク層と別のところに立っているわけで、彼女達自身が「オタク」ではない。
それに対して、でんぱ組Inc.の特徴は、
彼女達もまた「オタク」であること。むしろ、かなりコアなオタクなわけで。
図で書くと、こんな感じ。
オタク文化の中の再帰的な存在として、自らを位置付けている。
ある意味では、自分たちの居場所を作りたいから「でんぱ組Inc.」をやっているとも言える。実際のところ、でんぱ組Inc.の歌詞にはそのような内容が多くて、最上もが、がオタクとして生きる自分が生き延びるためにアイドルをやった、というのもうなずける話。
これは、かなり面白いやり方なのだけれど、反対に、冒頭で書いた「なんかとっつきにくい」という感覚もまた、これに起因しるところがポイント。
この再帰的なやり方は、外に対しては閉鎖的になってしまうことになる。結果、オタク以外の一般層からは、距離感があり、なんだかよくわらかない存在になる。でも、いったんコンテキストさえ頭に入れてしまえば、かなり良いですね、でんぱ組Inc.。
さてさて、もう一つ、でんぱ組Inc.が面白いところは、かなり真剣に「世界」を見ていること。曲の中にも「世界」という言葉は良く出てくるし、このアルバムの名前もまた「WORLD WIDE DEMPA」。この志向と、立ち位置は、実は符号していて、冒頭で、MVA ETAの日本代表にでんぱ組Inc.が選ばれたというニュースを紹介しましたが、このアワードの日本代表に選ばれたのも実は納得。
このイベントは日本文化の象徴でもある「OTAKU」文化を紹介したいわけで、それは他のアイドルでは無理で、仮にAKBを紹介しても、それはオタクを生み出しているアイドルを紹介しただけで、その対岸にいるオタク層・オタク文化については触れられていない。
一方で、オタクそのものである、でんぱ組Inc.。「世界」に実は一番近いのがでんぱ組Inc.だったというのは、当然とも言えます。何も知らないと、唾棄してしまうようなニュースかもしれないけれど、真剣に考えてみると非常に面白い。
というわけで、いくつかのアイドルグループを比べてみると、レヴィ・ストロース先生よろしく、かなり面白い構造が浮かび上がってきました。本当はここから、構造主義に始まり、ソシュールと記号論、果てはジャック・デリダまで説明したいとことですが、今回はここまで。
拝。