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50の風景と、風景にまつわる言葉。

小さな世界の窓から見える色々な風景のひとつずつ。

でんぱ組Inc. について、真剣に考えてみた。

音楽 批評

時代の流れと関係なく、今更ながら、でんぱ組 Inc. を集中して聴いてます。

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正確には、アルバム「WORLD WIDE DEMPA」は、だいぶ前からiPhoneのライブラリには入っていたのだけれど、少し聴いてみて、なんというか「とっつきにくい」というのが、第一の感想で、なんとなくあまり聴かないでいました。

でも、ここにきて、昨年末にMVA ETAの日本代表に選ばれたというニュースもあり、

改めて本腰を入れて聴いてみると、これが、とても良い。他のアイドルとは明確に立ち位置が違くて、これはなかなか興味深いなと思い、

 

でんぱ組Inc.について、真剣に考えてみた。

 

とっかかりとして、まずは、「アイドル」を整理してみる。従来のアイドルは、テレビをメインの場として、基本的にはテレビ越しにたくさんの「ファン」をかかえていました。  

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このテレビという一線を超えてきたのが、近年のアイドルなわけで、その象徴とも言えるのが秋葉原という場所。その秋葉原を聖地とするアイドル文化としては、AKB48ハロプロももクロ、あたりが代表的かと思います。

まずは、このあたりのグループがどうやって、ファンを、そして「オタク」を獲得しようとしているか。それは、簡単に言うと「どうやってファンとの距離を近づけるか」に尽きるわけで。

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シンプルな方法としては、コンサートを開くこと。その発展として、握手会があり、あるいは専用劇場のオープンなどが挙げられます。各グループはある意味では競い合うように、それぞれのファン(オタク)との距離を近づけようとしました。それはステージに出ることで、テレビという一線を超えた、とも言える。

 

そうやって、しのぎを削りあったアイドルグループですが、ここで出た大技が、いわずと知れたAKB48選抜総選挙。それまでアイドルが必死にオタクに近づこうとしていたところ、そのオタクを有権者にすることで、自分のステージに上げてしまった。

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今の状況は、AKB48の一人勝ち状態ですね。

まあ、それはどうでもよいとして、いずれにせよ、このあたりのグループはリアルな等身大としてのアイドルとして、ファンに向き合っているという意味では共通です。


そこで、一つ、対照的な存在が、Perume。(でんぱ組 Inc.の話はもうちょっと先で。。)

Perfumeが少し違うのはターゲットが完全にオタク層でないこと。そして、戦略的にリアルな存在というよりもヴァーチャルな存在として打ち出してます。アルバムジャケットや、PVや、ライブの演出を見ても、CGや最新の技術を駆使してますね。もちろん、コンサートなどは開くので、アイドルとしての存在はありつつも、よりPOPミュージック、芸能人としても存在に近いと言えます。等身大の姿をさらけ出さないことで、逆に、他のグループときれいに差別化が図れています。

 

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そのメリットは、、

  • ターゲットを広範にできる(オタク層だけのものではない)
  • 等身大ではなく、手が届かない憧れの存在になる
  • 例えば「秋葉原」といったような地域性を解消する(結果、Perfumeは海外での評価も非常に高い)

こんなところ


あと、とても大事なことは、PerfumeのPV(そして振り付け)はかなり意図的に、「狭い空間の中で成立する」ものになっているということ。AKB48のようにステージ上を走り回るわけでもなく、あるいはももクロのように飛び跳ねるわけでもない。

PVの画面越しに見えるこの狭い空間は、すなわち、視聴者のお茶の間だったり、個人の部屋であるわけで、その結果、Perfumeに関しては「踊ってみた動画」がたくさんupされてます。要は、モノマネして、自分もPerfumeになり切りたい、と思わせてもくれる。

また、ハロプロ、AKB、ももクロあたりのグループのファンは圧倒的に男性が多いですが、Perfumeは女性のファンも多く、年齢層も幅広い。ここも、Perfumeが他のアイドルグループとは大きく違う点(コンサートに行った時は、若干女性の方が多かったような)。

 

Perfumeの分析だけでも十分に面白いのだけれど、さて、ようやくでんぱ組Inc.の話に入ります。

 

前述の秋葉原系アイドルグループの特徴は、オタク層に向けてのベクトルを出して、それで競争していること。つまり、彼女たちは、オタク層と別のところに立っているわけで、彼女達自身が「オタク」ではない。


それに対して、でんぱ組Inc.の特徴は、

彼女達もまた「オタク」であること。むしろ、かなりコアなオタクなわけで。


図で書くと、こんな感じ。

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オタク文化の中の再帰的な存在として、自らを位置付けている。
ある意味では、自分たちの居場所を作りたいから「でんぱ組Inc.」をやっているとも言える。実際のところ、でんぱ組Inc.の歌詞にはそのような内容が多くて、最上もが、がオタクとして生きる自分が生き延びるためにアイドルをやった、というのもうなずける話。

これは、かなり面白いやり方なのだけれど、反対に、冒頭で書いた「なんかとっつきにくい」という感覚もまた、これに起因しるところがポイント。

この再帰的なやり方は、外に対しては閉鎖的になってしまうことになる。結果、オタク以外の一般層からは、距離感があり、なんだかよくわらかない存在になる。でも、いったんコンテキストさえ頭に入れてしまえば、かなり良いですね、でんぱ組Inc.。

 

さてさて、もう一つ、でんぱ組Inc.が面白いところは、かなり真剣に「世界」を見ていること。曲の中にも「世界」という言葉は良く出てくるし、このアルバムの名前もまた「WORLD WIDE DEMPA」。この志向と、立ち位置は、実は符号していて、冒頭で、MVA ETAの日本代表にでんぱ組Inc.が選ばれたというニュースを紹介しましたが、このアワードの日本代表に選ばれたのも実は納得。

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このイベントは日本文化の象徴でもある「OTAKU」文化を紹介したいわけで、それは他のアイドルでは無理で、仮にAKBを紹介しても、それはオタクを生み出しているアイドルを紹介しただけで、その対岸にいるオタク層・オタク文化については触れられていない。

一方で、オタクそのものである、でんぱ組Inc.。「世界」に実は一番近いのがでんぱ組Inc.だったというのは、当然とも言えます。何も知らないと、唾棄してしまうようなニュースかもしれないけれど、真剣に考えてみると非常に面白い。

 

というわけで、いくつかのアイドルグループを比べてみると、レヴィ・ストロース先生よろしく、かなり面白い構造が浮かび上がってきました。本当はここから、構造主義に始まり、ソシュール記号論、果てはジャック・デリダまで説明したいとことですが、今回はここまで。


拝。