読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

50の風景と、風景にまつわる言葉。

小さな世界の窓から見える色々な風景のひとつずつ。

「イニシエーション・ラブ」と、2016年の始まり

映画 批評

昨年末に借りていたDVDをようやく観ました。

年初めの映画とか、新年初めて聞く曲とか、無意味に意味づけをしたくなるものだけれど、年初めに「イニシエーションラブ」を観るというのは、なかなか悪くない行為だと思う。

  

www.ilovetakkun.com

 

映画の文脈としては「イニシエーション=通過儀礼」の意味付けがなされているけれど、「Initiation」は直訳すると「始まり」で、まさに2016年の始まり。


さて、この「イニシエーションラブ」が控え目に言って「とても面白かった」。

 

*これからネタバレ含んだ感想書きますので、これから観る人は要注意!

 

そして、これから観る人は、原作を読んでから観た方が良いです。
何故なら、この映画の面白さは「原作のトリックをいかに映像化するか」の一言に尽きるから。

ちなみに、原作はそれほど面白くないです。

トリック自体はこれまでにない種類のものだけれど、そのトリックを読者に気づかれないために、登場人物の感情が読み取れないよう淡々と描かれていて、その結果、トリックが最後に明かされても「で?」となってしまう。なので、それでもあえて映画版を観るモチベーションは「どうやって映像化したのか」になるのだけれど...

 

それが、こんなに、映像化されることで面白くなるとは。

 

映像化については監督の堤幸彦は見事に「脚本、演出、キャスティング」の点において完璧な結果を出している。そして、映像化により、このトリックの背景に潜む感情が絶妙に描かれていて...

更には、ラストについては、あるシーンを追加することで、原作を超える盛り上がり!こればかりは本当に見事だとしか言いようがない。


もう、前田敦子の最後の表情ったら!!


この、前田敦子という人間の存在がもう完璧。
これ以上ない演技、いや正確には前田敦子はAKBの前田敦子として、完璧に前田敦子をやり切ったと言った方がよいかもしれない。逆に言うと、原作が、そしてこの映画の脚本における「成岡繭子」という存在が、前田敦子のことを念頭に思い描きながら書いたのでは、と思ってしまうくらいのはまり役。

こういうのって役者にとっては、とても幸せなことですよね。

一方で、前田敦子は、いわゆる世の中が期待する「前田敦子像」を演じきっている。彼女は率直な所、そこまで演技は上手いわけではないけれど、役に成りきるのではなく、素を演じることで、まさに完璧な存在としてそこにあった。その「期待に応える」というのはやはりAKBであったことで培われたんでしょうね。

本当に、こんな映画は珍しい。


もう一度言わせてもらいますが、それにしても最後のあの前田敦子の表情ったら!

 

ちなみに、予告編等では「あなたは必ず二度観る」というコピーが使われていますが、特に「二度観たい」とは思わないです。むしろ観る必要性がまったくない。実際のところ、映画の最後はネタバレの「おさらい」映像となっているので、一回見ても十分"二度観"になってます。


いくつか突っ込みどころもある作品だけれど、この作品は他の種類の表現にはない面白さを間違いなく与えてくれるし、観る価値はあると思います。


拝。